バイデン米大統領が実現した「日米韓首脳会談」

バイデン米大統領が実現した「日米韓首脳会談」

2023年8月18日、アメリカ・ワシントンDC郊外の大統領別荘に、バイデン米大統領が、岸田文雄首相、尹錫悦(ユン・ソンニョル)韓国大統領を招き、会合を開いた。外国首脳が同地を訪れたのは、バラク・オバマ政権下の15年以来のこと。ホワイトハウス報道官によると、バイデン氏が日韓関係を「いかに真剣に受け止めているか」を示しているとのことだ。日本の新聞各紙も「日米韓協力の新時代」「朝鮮半島・台湾有事を念頭に安保強化」等の見出しで、バイデン氏がアジアにおける防衛同盟構築に専心したことは歴史的と評価した。バイデン氏が会談を開いた背景にはやはり米中の対立関係があり、日米同盟と米韓同盟との間の連携を強化したいとの思いが見える。同氏は会談により日米韓安保協力は新たな高みに引き上げられたとした。来年は国連安全保障理事会非常任理事国に韓国が加わることもあり、現職の日本ととも国連等、国際場裡での連携の重要性でも一致した。バイデン氏は会談に先立ち、日韓両首脳の「政治的勇気」をたたえ、「団結すれば、我々の国々は今まで以上に強くなり、世界はより安全になろう。それは、ここにいる我々3人が共有している信念だ」とし、会談終了後、記者会見で共同声明を出した。その概要は、まずは東シナ海と南シナ海での海洋紛争における中国の「危険かつ攻撃的な行動」に反対するとし、また、定期的な合同演習を実施することの他、危機の際には互いに協議すること、北朝鮮に関するリアルタイムのデータを共有すること、日米韓首脳会談を毎年開催すること等々である。記者会見では三者の合意を発表した。結果的に、岸田・尹の両首脳は、これまでの日韓の歴史的わだかまりによる対立関係の解消に努め、米政権との関係強化のためにも尽力したことになる。アジアにおける中国政府、とりわけ習近平中国国家主席は、民主制を敷く台湾に対して領有権を主張し、中国大陸との「統一」を実現する手段としての武力行使を排除してはいない。台湾領空への侵入や、台湾周辺での大規模な軍事訓練は、中国がいうところの「ニューノーマル(新常態)」になっており、それが日韓共通の懸念材料だ。さらには北朝鮮のミサイル発射やロシアによるウクライナ侵攻・継戦等、深刻な問題もあり、日韓を含む多くの国々は国家安全保障対策を否応なしに優先するようになった。こうした要素が重なった結果、アメリカの歴代政権が課題の一つとしてきた日韓関係の修復を、バイデン氏が実現させたといえよう。今後の不安要素(課題)は、現在の政権に留まらない、長期的に安定した関係の構築だろう。韓国を例にとれば、かつての文在寅(ムン・ジェイン)政権のような左翼寄りの大統領が今後の選挙で選ばれ、バイデン氏が成し得た“会談成果”が台なしになる可能性も否定できない。また韓国国民の中には、朝鮮半島を植民地にした時代の日本に対する過去の遺恨もあり、このような感情は早々に消えてなくなるものではない。また、国際法上も日本固有の領土とされる島根県の竹島に関しても、韓国は“独島”と呼び、自国領土と主張して不法占拠を続け、外交的な問題としてわだかまりは残るだろう。尹氏の韓国国内での支持率は高いとはいい難く、二国関係にどこまで重きを置けるのかは、今後の支持率によって制限される課題かもしれない。※本欄は月刊誌「リベラルタイム]2023年11月号「匠の視点」第43回としても掲載。