蘇った“民主党政権の悪夢”鳩山由紀夫内閣の「失政」

蘇った“民主党政権の悪夢”鳩山由紀夫内閣の「失政」

2023年7月、沖縄県の玉城デニー知事が5日間の訪中をした。玉城知事の訪中を巡って、6月に中国共産党機関紙『人民日報』が、習近平中国国家主席が中国と「琉球」の歴史的な結び付きに言及したことを報じており、「中国が沖縄を取り込もうとしている」と問題視された。尖閣諸島(沖縄・石垣市)周辺で中国公船が領海侵入を繰り返す問題について、自民党の沖縄県議が、日本の立場を中国側に説明するよう玉城氏に求めていたにも拘らず、親中派と目される同氏は李強首相との会談後、「特に尖閣についての話は出なかったし、私もあえて言及しなかった」と取材陣に語るに留めた。“台湾有事”の際に中国が最も警戒するのは在沖縄米軍の関与の有無であるはずだが、玉城氏はその視点を無視するかのようだ。この沖縄県知事の訪中問題で筆者が想起したことは、09年9月に政権発足した民主党の鳩山由紀夫総理による、普天間基地の辺野古移設に関する、“最低でも県外”との発言だった。民主党政権の成立は、それまでの長きにわたる自民党政権に対する倦怠感もあって、国民は高揚し、大いに期待を寄せた。しかし、総理就任直前の軽率発言が「沖縄・普天間基地問題を迷走させ、日米間にひびを入れ、安全保障問題に無知だった」ことを、後日、鳩山氏自身も告白している。基地移設問題の早期決着を公言したものの、当時の首相番記者との会見記事には、「目が泳いで、早い話が逃げの姿勢で、トップリーダーの姿はなく、日本は大丈夫なのかなあ」とある。その後も、彼は中国や韓国で祖国を貶(おとし)める土下座を繰り返し、国民を呆れさせてきた。前述の不用意発言に加え、マニフェスト(政権公約)・改革法案等の政策が二転三転し、優柔不断で決断もできず、民主党政権の政策決定システムの問題点を露呈させた。鳩山家の御曹司で、アメリカの名門スタンフォード大学の学位をもつ同氏は「政治主導」のスローガンを打ち出し、7割近い内閣支持率での船出ではあった、しかし、あっという間に支持率は2割に低下し、母親から前代未聞の高額(総額9億円超え)の資金提供を受けた〝偽装献金・虚偽記載〞問題も明るみになったこともあり、党内でも“鳩山おろし”が始まった。結局は、政権発足の翌年には内閣総辞職となり、早々に退陣してしまった。その後も悪びれることなく政権批判を続けているが、自身のことになるとお粗末極まりない。237月、鳩山氏はツイッターで、「近々NATO(北大西洋条約機構)首脳会議が開かれるが、ゼレンスキー(宇)大統領はNATO軍にロシアに対して核攻撃をして欲しいと要請」と誤った情報を書き込み、ツイッターの新機能であるコミュニティノートによって、事実と異なると訂正を受け、ネット炎上からの謝罪に追い込まれている。「ウクライナ語がわからず、日本語訳を信じてゼレンスキーがNATOにロシアへの核攻撃を要請と書いた」と弁明はしたが、批判が殺到した。短期間とはいえ、かつての自身の政権運営は、ガバナンスの欠如や「思い付き政策」による失政続きであった。鳩山氏は現在76歳。政界への未練もあるようで、22年610日に“次期衆院選に出馬し、政界復帰を目指す”意向を表明し、関係者を困惑させている。やはり迷走の度が凄すぎる人物のようだ。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2023年10月号「匠の視点」第42回としても掲載。