独裁国家中国を率いる「習近平政権」の野望

独裁国家中国を率いる「習近平政権」の野望

国際情勢を分析するには、中国抜きには語れない。中国は言論や報道の自由が制限される国家であり、そのような国のトップの思想や動向を探ることが要件だ。現在の国家主席は習近平共産党総書記で、2012年に開かれた共産党第18回党大会で最高指導者の座である総書記を手中に収め、翌13年には国家主席となり、三権(党・国家・軍)を掌握。22年10月開催の第20回党大会後の重要会議では、党総書記の任期は2期10年という慣例を破り、前例のない3期目の続投を確実にした。習国家主席は「反腐敗闘争」を口実に、政敵とされた元閣僚級高官や次官級現職幹部を汚職捜査の対象とし、党内の粛清を続けている。粛清の標的となったことを察知した者は、それを苦にして自殺するケースが相次ぎ、「不幸にも他界(自殺を意味する)」という言葉で続々と訃報が伝えられている。かつては共産主義青年団(共青団)の幹部が重用されたが、権力独占を追求する習氏は、執念深く非主流派を排除し、共青団派も徐々に衰えていった。総書記・国家主席として、最高指導部の中央政治局常務委員7人を含む、中央政治局員24人のほとんどを側近で固め、一強体制を確立。前述の第20回党大会の閉幕式のメディア報道で、習氏と当時の李克強首相の間に座った胡錦涛前総書記が途中退席させられた映像は衝撃的だった。筆者は15年の日中経済協会主催の合同訪中代表団に参加した際、李首相と一緒に記念撮影をしていたので、“わが師の胡錦涛氏”が退けられた李氏の気持ちに思いを馳せた。李氏は、かつては最大勢力だった共青団の現役筆頭格の党幹部で、習氏と並ぶ総書記の有力候補でもあった。それがいまでは個人崇拝と忠誠心を強いる習氏の権勢が絶大で、李氏は22年10月開催の党大会では新たに選出の中央委員204人に入ることなく引退。これまでの集団指導体制は崩れ、己を超える人物の出現を許さず、人民を習近平思想に染まらせようと図り、習氏は「建国の父(毛沢東)」と同格の権威となった感がある。共産党機関紙の『人民日報』によれば、中華人民共和国が建国された1949年に449万人だった共産党員は、若者エリート層からの入党希望者が増え続け、共産党創設100周年を迎えた時点で、党員は9514万人(人口14億人の約7%相当)に達したと報じた。“習1強”ぶりが際立った人事面では、習氏がかつて勤務した浙江省の人脈に連なる李強氏を、上海市党委書記(党政治局員)に転じさせ、その後、中央指導部(政権ナンバー2の党政治局常務委員・首相)入りさせ注目された。副首相のキャリアもなく首相になったのは初めてのケースだった。だが、その李強氏も、月刊情報誌「FACTA(23年6月号)」によれば、習氏との路線の違いが発覚してか、「名ばかり首相」と格下げの悲哀を感じさせているのが実情。米国防総省が22年11月に公開した「中国の軍事・安全保障動向2022」によれば、中国海軍は「数値的」に世界最大であると報告されている。習氏が海洋進出を目指す主眼はやはり台湾奪取で、自衛隊の元陸将は27年に「台湾有事」のリスクもありうると分析。23年1月の米下院議会では、中国の脅威に対抗するための特別委員会の設置(対中法案)が可決された。米中の対立は更に深刻になっていく。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2023年8月号「匠の視点」第40回としても掲載。