「経済不振」に苦しむ中国・習近平政権
2024年の我国は、元旦早々に能登半島地震や航空機炎上事故に見舞われ、波乱の幕開けとなった。岸田文雄政権は、昨年から続く「政治とカネ」の裏金疑惑問題への対応にも追われている。昨年末に“安倍派5人衆”の閣僚辞任等があり、政治資金パーティーの虚偽記載を巡る問題でも、政権運営は厳しい局面が続く。岸田首相は自らを本部長とする「政治刷新本部」を立ち上げ、1月11日に初会合を開き、派閥という表現は使わず「政策集団」という言葉で危機感を語った。地震災害対応や政治改革への取り組みに失敗すれば、9月の党総裁任期満了を前に首相交代を求める声が出かねない。内政が厳しい現状だが、筆者が憂慮すべき懸案と考えるのは、外交・防衛問題だ。親日の台湾は、早々に地震被害への支援金を申し出、被災者への温かい声援も送ってくれた。だが、そんな台湾には中国が勃発させる可能性を秘めた「台湾有事」問題があり、日本も引き続き要警戒すべきことだ。今年は中国建国から75年となる節目の年だが、独善・独裁を強める習近平国家主席は、12月31日に異例のテレビ演説を行い、台湾に関して「祖国の統一は歴史的な必然だ」と台湾への執着と統一への決意を表明した。1月10日、麻生太郎自民党副総裁は米シンクタンクが主催する講演の中で、台湾への圧力を強める中国に対して、「性急な軍事的統一は国際秩序を混乱させるだけであり、容認できない」と明確に牽制。1月13日に行われた台湾総統選挙の投開票の結果、軍事力強化に尽力した民進党の蔡英文政権の後継である頼清徳副総裁が政権を担うことになった。台湾統一を掲げる中国が圧力を強める中、後ろ盾となるアメリカとの連携を深めた蔡英文路線の継承を訴えた。日米関係を堅持する上では歓迎すべき結果といえるが、中国習近平氏は怒り心頭であろう。台湾選挙には海外メディアも注目しており、米CNNは「台湾の有権者は中国の警告を退け、与党に歴史的な総統選3連勝をもたらした」と報じたが、中国は台湾への経済的・軍事的圧力をエスカレートさせる可能性がある、との見方も示した。習主席のテレビ演説で、習氏は独自の価値観(中国式現代化)を国際社会にも呼びかけ、経済的な優位性も強調したが、経済通の評論家等は中国が経済的苦境に追い込まれていると分析。その背景には、昨年の中国経済は不振が鮮明となり、今年も暗雲は晴れそうにない状況がある。例えば、中国国家統計局は、23年末の製造業購買担当者景気指数は49.0と、好不調の境目となる50を3カ月連続で下回り、特に雇用や輸出が振るわなかったと公表している。中国のニュースサイトやSNSでも人員削減の話題が絶えることはなかった。ゼロコロナ政策からの経済再開は不発で、雇用の不振が賃金の伸び悩みに繋がり、中国の国内消費が停滞する最大の要因になっている。これまで経済政策の運営方針を定めるのは中国共産党第20期中央委員会の第3回全体会議が通例であったが、習氏はなぜか見送った。3月開催予定の全国人民代表大会では、李強首相が政府活動報告を発表し、最終日には記者会見も開くと見られている。中国経済の成り行きは、その会見での内容次第で、今後の景気実態や経済政策を見極めることになろう。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2024年3月号「匠の視点」第47回としても掲載。