スマホ片手に手軽になった「炎上」

スマホ片手に手軽になった「炎上」

月刊誌「リベラルタイム」12月号で、「炎上」の研究と題した特集が組まれていた。今回は同誌での筆者連載「匠の視点」のテーマとして、それらがもたらす影響や対策について考察する。現代の社会では、公共の乗り物の中等では多くの人がスマートフォンを片手に見ている光景が日常的になっている。かつて通勤時には新聞・雑誌を手にした会社員が一般的だったが、それもスマホに替わった感がある。筆者も気になっていることの一つが、スマホに関連して炎上が容易になった点だ。ネット上では、他人の言動に批判が殺到する事例が頻繁に見られ、企業にとっても悩ましい課題のようだ。総務省の情報通信白書(令和元《2019》年版)では、“炎上”とは「ウエブ上の特定の対象に対して批判が殺到し、収まりがつかなさそうな状態」、「特定の話題に対する議論の盛り上がり方が尋常ではなく、多くのブログや掲示板などでバッシングが行われる状態」と定義している。日本では05年頃から「炎上」という名称で広く認知されるようになったようだ。炎上では個人が投稿したブログやX(旧ツイッター)等に不適切な箇所があれば、それに対し、短時間のうちに不特定多数から批判的なコメントが殺到する。企業等では、ミスや問題をユーザーに投稿され、組織がバッシングされる。著名人であれば、テレビ・ラジオ等のマスメディアでの発言をきっかけに、当人のブログやX宛に批判が投稿され、瞬く間に拡散される。特に個人や企業にとってマイナス情報は予想外の悪影響をもたらす。何に価値を置くかは人それぞれなので、同様のトラブルであっても回避することは容易ではない。最近では、「迷惑行為」に由来する動画がきっかけとなったものが印象深い。若者が飲食店内でした悪ふざけ動画が拡散したことに関連し、過去の様々な事例が取り上げられた。また、政治家・芸能人等の有名人の男女関係がいわゆる“文春砲”等で話題となり、それを知った読者に炎上させる事例もあった。雑誌・週刊誌等が、些細なことを面白おかしく取材し、“売らんかな”丸出し見出しで掲載し、それに乗せられる読者もいるからだろう。企業等の例では、広告の文言等が注目を浴び、一見何ごともないようなことでも炎上被害を受けるケースも。炎上時の悪質なケースでは、個人情報をネットに上げて、面白がる者も少数だがいるようだ。炎上はいつ起こるかはわからず、また対象も個人・企業等様々であり、しかも事前に予期していないケースがほとんどで、対処も困難だ。話はそれるが、左派系のメディア記者も抱える有名新聞・雑誌社の場合、意図して必要以上に政権批判を呼び起こす状況を生み出すことも多々ある。現内閣の支持率調査等はその一例といえよう。無作為に選出した人々にアンケート調査し、結果を公表してはいるが、質問事項や質問の仕方次第で結果は微妙に異なる。他媒体の報道傾向を横目で眺めながら、互いに方向性を決めている感じは否めない。それが顕著に現れているのが、最近の岸田文雄現政権に関する報道だ。「支持率が20%を割ったので、政権末期だ…」等と単純に発信し、自民党の“岩盤右翼”支持者も見放しつつあるとのことだが、過去政権の末期には支持率一桁になったケースもある。国民は当然だが、政財界の誰もが納得・支持できる後継総裁候補がいないのが実情だ。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2024年2月号「匠の視点」第46回としても掲載。