「国家安全保障戦略」の改定が急務

2021年11月10日、第2次岸田(文雄)内閣が発足し、岸田首相が第101代内閣総理大臣として選出された。一方では同月11日に安倍(晋三)元首相が自民党内の最大派閥である清和政策研究会会長に就任した。今般の衆議院選挙では、かつての安倍政権下で改憲勢力と呼ばれた「自民党」「公明党」「日本維新の会」の3党が国会による改憲案発議に必要な議席3分の2を衆院で確保。一方、野党側は「立憲民主党」が「共産党」と組んだことで、政権批判票が改憲を主張する「維新」に流れ、中国への対抗姿勢をとる岸田氏・安倍氏両名が勝利した。安保問題の深刻さを理解できなかった立憲は惨敗し、枝野幸男代表は辞任に追い込まれた。野党は批判だけでなく、「我党ならばこうする」というべきだった。これまで中国は、尖閣について「我国固有の領土で、核心的利益」だと主張し、領海侵犯を繰り返している。日米安保条約が破棄されれば、沖縄からアメリカ軍が追い出され、中国軍が尖閣に侵攻することになる。中国は「日本には沖縄の領有権はない」と公言しているので、沖縄にまで手を伸ばす可能性さえある。安倍政権は、「日本国憲法第9条」の「戦力の保持」「交戦権の否定」等の問題を切り抜け、「安全保障関連法案」を成立させた。また、他国同士の戦争への参加を可能にする「集団的自衛権の行使」を閣議決定し、日米等の同盟強化を掲げ、防衛力も増強している。直近の内閣府による世論調査等の傾向は、「国の安全」「国民の生命」が最優先されるべきと、安保条約支持派が国民の多数派を占める。岸田政権は「国家安全保障戦略」の改定を表明し、党是である憲法改正を進めるとしている。21年11月9日付の新聞報道等では「敵基地攻撃能力等も盛り込まれる見通し」だ。中国は地上ミサイルだけでも2千発以上が日本を射程に収めている。また、これらは地上発射式で、アメリカによる抑止は効かない。日本の九州から沖縄、台湾、フィリピン、ボルネオ島までの第一列島線(中国が定める対米防衛ラインもあるが、)のどこかに地上発射式のミサイルを置けないのかという指摘もあるが、地上ミサイルは地上ミサイルでないと防げないようだ。先制攻撃でなければ憲法問題にはならない。岸田氏が言ったように反撃の範疇であれば、敵基地を叩いても自衛権の行使に該当し、憲法にも抵触しない可能性は高い。岸田内閣では22年12月までに「国家安全保障戦略」の改定を目指す見込みで、想定国は北朝鮮よりも対中国を重視する考え。今後1年間かけて公明党との調整が必要となる。憲法9条改正案は自民党公約にも盛り込まれ、自衛隊を明記することへの賛成が多数を占めた。自民党総裁としては憲法改正を進めるために、党内の体制強化や国会の議論の進展等を指示したことを明らかにした。ハト派のイメージがあった岸田氏が改正を打ち出したことにより、改憲の現実味は増した。岸田政権が長期政権化する可能性も出てきている。日本の防衛費はこれまでおおむねGDP(国内総生産比1%以内に抑えられてきた。先の衆院選で自民党は防衛費について「GDP比2%以上も念頭に増額を目指す」と発表した。今後、内外の期待や懸念を集めることになるだろうが、対中国の安保政策を考えた場合、当然のことだ。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2022年1月号に「匠の視点(第21回」」としても掲載。