習近平政権の権勢は“張子の虎”

2021年7月1日、北京の天安門広場で中国共産党創建100年の祝賀大会が開催された。式典の模様は日本でも報道されたが、22年秋の第20回党大会での任期延長がほぼ確実視されている習近平国家主席は、最高指導部の中でただ一人、毛沢東をイメージさせる人民服で身をまとい、自らが毛氏と並び立つ指導者であることを誇示してみせた。鄧小平氏が敷いた集団指導体制の終焉を感じさせた60分あまりの演説の中で、中国を経済大国の地位に押し上げた党の功績をアピールし、共産党支配体制の正統性を主張し、「中華民族は偉大な復興に向けて止められないペースで前進している」「侵略により半植民地状態だった中国を経済大国に導いた」「共産党がなければ新中国もないということを、100年の歴史が証明している」等と共産党の実績を強調。その上で「党と人民を切り離そうとするいかなるたくらみも実現しない」と団結も誇示した。米国に迫る経済大国となった中国が、社会や思想への統制を強め、民間企業の経営者への圧力や芸能や教育など若者の思想形成に影響力を持つ分野への介入が相次ぎ、中国はにわかに「文化大革命」の様相も帯びている。思想的な正統性を重視するようになり、穏健な反対意見論者を弾圧し、毛沢東が再び称賛されるようになった。“習近平思想”を受け入れ、官僚組織も軍も警察も、異論の持ち主や汚職を働いた職員をパージし、大企業も同調させられている。草の根レベルで党を建て直し、隣近所に目を光らせるスパイのネットワークを構築し、党幹部を民間企業にまで送り込んで監視させている。例えば、中国の民間企業の故郷といわれる浙江省の杭州市(筆者も以前勤務していた旭化成の仕事の関係で訪問したことがあり、今でもグループ会社4社が存続)では、共産党中央規律検査委員会のかけ声の下、いきなり官僚ら約2万5000人に関して政治とビジネスの癒着を含む「政商関係」の大々的な調査が始まり、指揮官である市トップが重大な規律違反で摘発され、市の官僚らを戦々恐々とさせている。7月6日に、世界160カ国の政治家1万人を招待し、世界政党指導者サミットを遠隔で実施したが、前例のない規模と共産党が進める国際政治という側面から「コミンテルン(国際共産主義運動の指導組織)の復活」と揶揄する声も出ている。米国メディアの論調も冒頭の式典を「習近平ただひとりを礼賛するイベントと化した」として否定的であった。「習近平は毛沢東以降でもっとも好戦的で抑圧的な指導者である(7月6日付ニューヨーク・タイムズ)」「中国脅威論」が高まる一方、「中国崩壊論」を唱える論調も出始めている。米調査機関ピュー・リサーチ・センターが演説前日の30日に発表した先進17カ国を対象とする調査によれば、中国に対する見方は概して否定的であり、習氏に対する信頼度は過去最低水準になったというものだった。中国共産党の幹部を養成する中央党校の元教授も、同30日付ウォール・ストリート・ジャーナルのインタビューで「中国共産党は見かけ上強大そうに見えるが、その実態は『張り子の虎』に過ぎず、米国政府は共産党の突然の崩壊に備えておくべきだ」と述べている。これでは、今なお江沢民派との権力闘争も続いており、脆弱性も内包している習氏は晩節を汚すことになるかも知れない。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2021年11月号に「匠の視点(第19回)」としても掲載。