タブーを排して「核共有」の議論を 

ウクライナ戦争は「出口戦略」が見えず長期化する見通しだ。G7(主要先進7カ国)と欧州連合(EU)は対ロシアへの経済制裁レベルを引き上げたが、プーチン大統領本人への影響は当面は出そうにない。侵攻の動向を事前に把握していたバイデン米大統領の弱腰姿勢は、習近平中国国家主席にも伝播している。すでに勃発している米中冷戦が核戦争という“最悪の事態”へ展開することだけは回避したい。大量破壊兵器の脅威や、北朝鮮も含め、中露が核保有を誇示し始めている状況では、日本国民にも国防意識変革の必要性が求められる。筆者は202112月号の本欄にて「『国家安全保障戦略』の改定が急務」と題した執筆をした。また、かつて形骸に接していた山口信夫氏(元旭化成会長/元日本商工会議所会頭)は全国防衛協会連合会の第2代会長であり、筆者自身も外務省所管の、「外交・安全保障調査研究事業費補助金審査・評価委員会」委員長(201314年度)として、防衛基盤強化の議論をしてきた。国際社会では核戦争という言葉も飛び交う現状は、ウクライナ危機が“台湾有事”へとつながる。日本も「明日は我が身」と考えるべきだ。我国は日米安保条約を軸に、アメリカによる核の傘と米軍駐留を頼りに、自衛隊を軍隊と呼ぶこともなく、日米共同訓練に励んできた。そして“核アレルギー”や“憲法9条問題”等もあって、「非核三原則、専守防衛」を国防政策の要としてきた。この原則を見直すには70年以上(1947年施行以来)も改正されていない日本国憲法の修正が必要だ。これまで自民党は党是として改正の必要性を主張してきた。安全保障環境が大きく変化しているのに合わせ、「国民主権・基本的人権の尊重・平和主義」の三原則は維持しつつも、アップデートは必要とされている。改正の方向性としては、自衛隊を憲法に明記し、憲法学者等の現実乖離の「自衛隊違憲論」を解消し、自衛権についての言及もすべきとされている。また、米中の“新冷戦”が到来している国際情勢の中、覇権主義的な習近平主席は台湾侵攻の準備をしているとの分析(冨澤暉元陸上幕僚長、『週刊新潮』2022年3月24日号より)もある。また、安保政策策定の中核機関である防衛省防衛研究所の高橋杉雄防衛政策研究室長によれば、「プーチン氏による核兵器使用の脅しの持つ意味は、『第3の核時代』と呼ぶべき時代の始まりと考え、核は使う準備をしないと抑止力として機能しなくなる時代」とし、日米同盟に「核共有(核シェアリング)」も必要ではないかと主張している。アメリカの介入を阻むためロシアが核の使用をちらつかせているのは、まさにこうした抑止観に基づいているからだ。224月、安倍晋三元首相は山口市内での講演で、「相手の能力や覚悟を見誤ったときに紛争や衝突が起きる」と指摘し、憲法9条への自衛隊明記を訴えている。中国の軍事力増強に懸念を示した上で、日本の防衛費を増額し、23年度は少なくとも6兆円程度の確保が必要だとの考えを強調した。そして、警戒し、牽制すべき人物は「プーチン氏よりも習近平氏」とのようで、同感の筆者も溜飲が下がる思いがした。核戦争を未然に防ぐには情報戦(サイバー攻撃やフェイクニュースによる世論誘導等)対応に加え、「核の抑止力」も欠かせないということだ。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」20226月号「匠の視点(第26回)」としても掲載。