「蜜月関係」をアピールした岸田・バイデン両首脳

「蜜月関係」をアピールした岸田・バイデン両首脳

岸田文雄首相は2024年9月で首相在任3年を迎える。4月23日で在任日数は933日となり、すでに戦後歴代8位の橋本龍太郎氏を超えている。そして、選挙の時期は不明だが、岸田氏が自民党総裁続投(再選)となれば、この9月で岸信介氏の歴代在任7位も抜く。現政権に対する支持率は低迷続きではあるが、野党への期待は乏しく、国内の多くの有権者が納得できるような後継総裁も不在のようだ。そのような状況下、岸田首相は長期政権を心に秘め、4月10日にバイデン米大統領による国賓待遇による招待を受け、訪米した。到着後の岸田氏とバイデン氏両名の表情は、“会うや否や”の待ち焦がれていた二人が久方ぶりに会った時のようだった。岸田氏はバイデン氏が副大統領時代に外務大臣を務め、互いに顔見知りだったので、二人が気脈を感じさせる場面も多々あった。日米首脳会談や共同記者会見等でも、両名の「蜜月ぶり」を際立たせた。例えば、岸田氏が笑顔で「ジョー(バイデン氏)と私は数限りない対話を…」と語る一方、バイデン氏も「日米同盟は歴史上、かつてないほど強固になった。あなたは真のリーダーであるだけでなく、真の同志であり、真の友人だ」と、岸田首相をひたすら褒め続けた。このようなバイデン政権の異例ともいえるもてなしは、アメリカ中心の国際秩序を守るため、歩調を合わせる日本への強い感謝の表れだったといえよう。そこで、筆者が想起したことは、国家間の関係は両国トップ同士の相性も関係するという点だった。振り返ると、17年11月に日米首脳会談のため、国賓として来日したトランプ前大統領が、当時の安倍晋三首相と同伴して東京オリンピックのゴルフ会場に決まっていた霞ヶ関カンツリー俱楽部でプレーした時の様子が思い出される。相性がいい、気が合うことを英語では、“have chemistry”というが、その言葉が浮かんだ。トランプ氏の来日中に安倍首相との間で垣間見られた相性の良さだ。トランプ氏はものごとの好き嫌いがはっきりしており、それを隠すことはしない性格だ。日米間には貿易問題を始めとする難題も横たわっていたが、トランプ政権発足当初から両者は互いに好感を抱き合い、信頼関係も構築できていた様子が窺われた。メディア報道による「両者のゴルフ時の笑顔のスナップ写真」は、いまも私の脳裏に焼き付いて離れない。岸田氏は、訪米を手始めにトップ外交も続けた。大型連休中の5月3日から、南米で中心的な役割を担う国や、地政学上の要衝を訪問した。首脳外交だけでなく、現地の日本人と交流する等、精力的に動き、日本の存在感をアピールした。就任後初めて南米を訪れ、G20(20カ国・地域首脳会合)の議長国のブラジル、南米5カ国の関税同盟メルコスル(南米南部共同市場)の議長国であるパラグアイも訪問した。岸田首相と手分けしてアフリカ3カ国を訪問した上川陽子外相も、西アフリカのナイジェリアでトゥガー外相と会談する等、「グローバルサウス」と呼ぶ新興・途上国との経済外交を進めた。同盟国との連携を強めることで、中国やロシアに対抗しようとするアメリカの戦略に、日本が積極的に呼応した形だ。その様子が連日メディア報道で流れており、5月4・5日に行ったJNNの世論調査で岸田内閣を支持できるという人は、前回の調査から7.0ポイント上昇し、29.8%となった。支持率上昇は7か月ぶりのことだ。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2024年7月号「匠の視点」第51回としても掲載。