「メディア」の発信側と受け手のあるべき姿を問う

「メディア」の発信側と受け手のあるべき姿を問う

現代社会における新聞・テレビ・週刊誌・専門誌等のメディア情報を発信する側の思惑は、その時代の盛衰にも影響する。とりわけ現代は、インターネットやSNSが登場し、マスメディアに対する国民の意識も大きく変化している。X(旧ツイッター)等に書かれたネット情報の影響力が大きい。筆者は2024年4月に一般社団法人「内外メディア研究会」の理事長に就任した。企業経営者や一般社会人にとって、メディア情報の的確な判断・理解力が、企業の命運や個々人の人生や社会生活に大きく影響する。同会ではその対応のあり方を研究している。同会は、現会長である原島一男氏が15年7月に設立し、本年7月で8周年を迎える。一般社団法人であるので、営利を目的とするものではない。現代社会におけるメディアの調査・研究に加え、情報の収集・交換を行い、人と人、団体と団体のコミュニケーションの充実・促進を図り、社会全体の健全な発展に寄与することを目的としている。月に1回開催する例会には、最新の話題を詳しく解説し、その成り行きを展望できるジャーナリスト、学者、専門家やメディア関係の第一人者(新聞社/テレビ局の現役報道部長をはじめ、雑誌編集長・編集委員等)を講師として招き、メディアの最前線の情報を参加者に披露している。企業等の経営スタッフのメディア情報に対する判断能力の向上や、一般には公表されない”生の声”を聴く機会を与え、参加者からも自由闊達な質問や意見が出され、有益な集いとなっている。古くは数々の名言を残した田中角栄元首相は、マスコミを「第4の権力」と呼んだ。電波を媒体とするテレビ・ラジオや活字媒体による新聞・雑誌等の報道は、速報性・同時性の優劣により、同じ事柄でもその扱い方に微妙な違いが生じる。報道する側に意図する狙いがあれば偏向報道にもなりうる。真実・事実だけを報道することの難しさは理解できるが、報道する側の事実誤認や勘違いで誤報となるケースもある。ただ、最近の、とりわけ政治関連報道については、マスコミ企業の経営幹部や制作スタッフが“ある政治観”で結束すれば、自分達が望む方向に国民を誘導することも不可能ではないと指摘しておきたい。政治関連の場合は特に、完璧な公平性を求めることには無理があるからだ。政権与党に対する監視を名目に、あたかも野党を代弁するかのごとく現政権を批判することもあれば、知識人の間で以前からイメージされてきた『朝日』『毎日』対『読売』『産経』のように、これまで「進歩主義VS.保守主義」等と対立した二分法で語られてきた。さらに最近目立つのは、興味本位と営利目的での報道もある『週刊文春』『女性自身』等の雑誌の影響力が大きくなったことだ。まさに“文春砲”と揶揄されるほど、メディア企業等の発信する側の「権力(影響力)」は大きく、個人の名誉やプライバシー等国民の人権を侵害する事例も後を絶たない。マスコミ報道やメディア企業を、受け手(視聴者・読者)がどのように位置付け、判断するかも重要だ。「知る権利」を盾に実名報道をしたり、反対に扱いを控えめにしたりすれば、政治関連情報の場合は支持政党への忖度が働いていると推測もできよう。現代の日本メディアには言論の自由と民主主義が根本にあるとはいっても、その基本は客観報道のはずである。事実を歪曲・捏造して情報操作をしたり、著名人の名誉を傷つけたり、国益を損なうような報道を垂れ流すことだけは回避して欲しいものだ。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2024年6月号「匠の視点」第50回としても掲載。