“一強独裁”を目指す「習近平体制」

“一強独裁”を目指す「習近平体制」
2026年3月5日、中国で全国人民代表大会(全人代)が開幕した。李強首相が第15次5カ年計画を公表した。中国中央テレビ(CCTV)では、政府活動資料を“両手で持って傾聴する軍部の様子”が中継された。1949年に建国宣言をした毛沢東が、「我々の目標は米国(アメリカ)を追い抜くことだ」と掲げ、55年に目標達成への5カ年計画が始動した。訪中した人々のほとんどが、その様子を描いた毛氏の肖像画を北京の天安門で目にしている。中国の国内総生産(GDP)は2010年には日本を抜き、日本の5倍近くとなった。ただ、アメリカの7割近い水準までは達したが、目標とした30年にアメリカに追いつくことは困難とみられている。12年、当時副国家主席だった習近平国家主席は「広大な太平洋は中国と米国の2大国を受け入れるのに十分な空間がある」と主張していたが、最近は対象を太平洋から地球全体に広げ、「地球は中米両国を受け入れることは可能だ」と変容している。26年3月末(予定)にトランプ米大統領は中国を訪問。中国はアメリカ経済を猛追し、GDPはこの3年間で20兆元近く増えたが、不動産の価格下落等で、人民の財産はその10倍のおよそ200兆元減っている。冒頭の5カ年計画で示した「自立的な強国」を目指す方針は脱アメリカを視野に入れたものだった。5カ年計画について、『日本経済新聞』の多部田俊輔中国総局長は「G2時代を見据える習政権の成長の持続力が試される5年となるようだ」と評している。最近の習氏は毛沢東時代に倣ない、独裁一強体制を固める動きが目立つ。『ウォール・ストリートジャーナル』が報じるところによれば、習政権は大規模な軍の粛清後、人民解放軍指揮部の再建という課題に直面している。腐敗と忠誠問題を理由にした相次ぐ粛清によって、軍の首脳部に空白が生じ、新しい高位指揮部の構成と軍の現代化推進を同時に解決することが求められている。習氏は第14期全人代第4回会議における軍と武装警察部隊代表団の全体会議にて、「軍には党に忠誠を誓わない者がいる余地はなく、腐敗勢力が隠れる場所もあってはならない」と述べた。また上記の発言に対して「これは1月の最高位の習軍を粛清した後、軍問題に関して出した最も包括的な発言だ」ともコメントしている。川島真東京大学院教授によれば、27年秋の党大会で習氏が総書記(党主席)として4期目に入ることが予想される中、続投する習氏のその後の人事にも注目が集まっているという。32年、習氏の4期目が終わった後に、習氏の後継者となる次世代候補のうち、誰が中国共産党政治局常務委員になるのかに焦点が集まっているのだ。川島氏は27年に迎える軍・外交の人事交代も加わり、中国は完全に「人事のシーズン」に入ったとしている。今後、中国では人事をめぐる「鍔迫り合い」や「足の引っ張り合い」が、腐敗や不正の摘発等の形態を取りながら生じていくのだろうと分析した。これも長期政権の持つ大きな政治的リスクの一つだ。また、前述のCCTVが伝えるところによると、全人代常務委員会は王祥喜応急管理相の解任を決めた。現職閣僚を解任した理由は不明だが、汚職に関わった可能性が高いとされる。さらには人民解放軍事法院(裁判所)の劉少雲院長の解任も決定。習指導部は「反腐敗」を掲げ、汚職の疑いのある党や人民解放軍の幹部を摘発し続けている状況だ。