深刻化する米中関係を観る

第二次世界大戦後かつての米ソの対立が生んだ冷戦(Cold War)という言葉は、諜報等の心理的戦争という公然とした実力行使が伴わない、敵対活動を指すものであったはずが、対立が深刻化している今日の米中関係で使用され始めた。この対立は今後もエスカレートする一方と見られ、現在(20208月)の中国からすれば1979年の米中国交正常化以来、最悪の状況のようだ。「人民日報」系の「環境時報」の最近の論文中で、ある中国共産党元高官は“劇的悪化”と表現しているし、元外交官の作家である佐藤優氏も「新型コロナウイルスによる感染症が中国の武漢から拡大していたことによって、アメリカの一般国民の対中感情が悪化。それが政治問題と結びつき、中国を懲罰するタイミングに至ったとのコンセンサスがアメリカの社会で形成されつつある。米中外交戦争が始まった」とまで言及している。両国はすでに3月時点で関係悪化が表面化しつつあり、トランプ米大統領は「中国ウイルス」と呼び、一方の中国外交部スポークスマンも「米軍が持ち込んだ」と応酬する等していた。そして特に先月7月に入ってからは、アメリカが“IT技術流出行為”を理由に在ヒューストンの中国総領事館の閉鎖要求をする等、外交面で“中国叩き”が公然と開始された。中国側も四川省成都にあるアメリカ総領事館の閉鎖に動く等の対抗措置をとった。一部では、“コロナ危機”の先行きが読めない時点でのアメリカの姿勢は、本年11月の米大統領選挙に向けたトランプ氏の戦術だと評する者もいたし、中国側も「大統領選までは一段の波乱も覚悟しているが、仮にバイデン副大統領が政権に就けば対立の深化は避けられる可能性がある」と期待している(7月下旬の「ロイター通信」発表)。ただ、経済面での“中国潰し”はかなり以前から開始されていた。例えば、中国製品に対する莫大な制裁関税の継続や、とりわけ華為技術(ファーウェイ)への封じ込めは周知のこととなっていた。アメリカがこのような対応をするようになったのには、既述した事柄の他にもいくつかの要因が考えられる。中国の南シナ海の領有権主張、「ウイグル人権法案」、香港優遇措置廃止、台湾への武器売却承認等に関する問題等もあった。それらの背後にあったのは、一言でいえば、「世界における中国の存在感の高まり」に対するアメリカの警戒心が発端だろう。強大化する中国の脅威や経済圏構想「一帯一路」等は資本主義国(西側陣営)の欧州にも影響するものであり、アメリカももはや黙視する段階ではなくなっていた。中国の一部高官とアナリストによると、中国は今後数カ月間、アメリカとの緊張を制御し、必要な時だけ報復するという基本姿勢で臨む構えのようだ。米中対立激化への懸念は高まるばかりであるが、我国はこのような世界の動きと、どのように向き合っていくのかが問われるが、アメリカとの協調が優先されることが前提であろう。※本論は月刊誌「リベラルタイム」202010月号に「匠の視点(第6回)」としても掲載。