活発化する自民党内の派閥争い

2022年7月10日に投開票となる参議院選挙を前に、政権との対立姿勢を強めたい立憲民主党は、6月9日の衆議院本会議で内閣不信任案を提出した。野党第1党の地位も危うくなっている同党の、ここぞとばかりの提言ではあったが、野党間の対応も割れ否決に終わった。野党間の足並みの乱れが透けて見えたと同時に、野党間の分断も深めた。同日提出の自民党細田博之議長への不信任案も否決され、「木を見て森を見ず」状態の野党を尻目に、報道機関等の野党への関心は低下する一方だ。そこで注目を集めることになりつつあるのが、自民党の各派閥(党内野党)の勢力争いだ。自民党の党則には派閥の規定はないものの、各派の会長職議員の苗字が派閥名(通称)となっている。かつての55年体制における中選挙区制では、選挙区1つにつき、5人まで当選できたため5大派閥に収束していた。しかし、現在は小選挙区制に移行しているので1選挙区につき、当選者は1名で選挙区との関係もなくなり、派閥も6つとなっている。衆参合わせて、自民党内派閥所属議員数の議員数を多い順(6月10日時点の人数)で並べると、安倍派(96人⁼衆院61、参院35)、茂木派(54人⁼衆院33、参院21)、麻生派(50人⁼衆院38、参院12)、岸田派(44人⁼衆院32【※吉川赳衆院議員が週刊誌のスキャンダル報道で離党した為1名減】、参院12)。そして、二階派(42人⁼衆院34、参院8)、森山派(7人⁼衆院6、参院1)、その他石破グループ・旧谷垣グループ・菅グループや無派閥等(総計83人)である。このところ、にわかに菅義偉前首相の周辺で“菅派”の旗揚げが取りざたされている。菅氏本人は所属可能な議員の人数も把握困難のようで、自民党の某幹部の憶測によると、衆参両院でせいぜい20人~30人前後(現在の菅グループは23人⁼衆院13、参院10)と言われている。グループ所属議員の中には将来の首相候補も見当たらず、菅派の旗揚げは難しそうだ。年齢的にも、現職岸田文雄首相(岸田派会長)が64歳なのに対して、菅氏は73歳である。なお、安倍晋三元首相は67歳と菅さんより若くて“元気溌剌”であり、7年8ケ月にわたる長期政権を運営した実績をベースに、各方面で発信力を発揮している。筆者は6月5日開催の「交詢社オープンフォーラム」における安倍氏の講演をオンラインで聴いた。氏はその際に、緊張する台湾海峡情勢への対応への考え方について、持論を披露したが、言葉を選びながらも余計なことを言わず、内容もよく、表情等にも余裕も感じさせた。政権の役割としての外交政策(国の防衛・安保も含め)までを考えると、安倍氏の再々登板も期待したい。それとは別に、各派の将来の首相候補と目されているのは、一説に安倍派は萩生田光一経済産業大臣、茂木派は茂木敏充幹事長、麻生派は麻生太郎副総裁の義弟である鈴木俊一財務相、岸田派は林芳正外相(現政権が長期化すれば木原誠二内閣官房副長官)とのようだ。まずは直近の参議院選挙の結果がどうなるかに注目したい。参院選の選挙区74議席における「野党共闘」は限定的のようであり、また、比例区50議席では過去3回は自民党が大勝している。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2022年8月号「匠の視点第28回)」としても掲載。