日本にとっての「台湾」

「二つの中国」とは、独裁体制の中国共産党支配の中国と、民主化した島国の台湾 (中華民国)のことである。 日本は、1972年に〝一つの中国〞を国是とする中国と国交正常化する際、それまで国交があった台湾とは断交し、以後国交がない。中国への日本人の好感度や信頼度が低迷する中、台湾に対しては、尖閣諸島や歴史的認識を巡る問題はあるが高好感度は続いている。背景には、90年代以降の台湾の民主化と経済発展を始め、台湾トップを決める選挙も96年から国民による直接選挙という民主的な手法に変わっていたこと等があった。特筆すべきは、2011年の東日本大震災において、「人口2400万人(当時)の台湾が200億円を超える義援金をいち早く寄せてくれた」ことがあげられる。19年に日本台湾交流協会(会長/大橋光夫)が実施した世論調査でも、59%の台湾人が日本を好きな国としており、日本人に日台間の信頼と友情の〝絆〞を再認識させてくれた。そして、初めての台湾出身(本省人)の総統として日本人の台湾観にも影響を与えたのが李登輝氏だ。彼は、中国の軍事的圧力に対して台湾の独立を守り、台湾独立運動に影響を与え続け、「台湾民主化の父」 とも評された。日本の“親台派”から、その親日ぶりで好感度を持たれたが、207月に多くの日本人に惜しまれ逝去された。現総統の蔡英文氏も、やはり本省人で、16年に女性初の総統となった。20年の総統選挙では、「台湾は一国二制度を絶対受け容れない」と中国との対決姿勢を打ち出し、再選を果たしている。実は、菅義偉政権で防衛相に就任した岸信夫氏は、防衛や外交関係政務を歴任しており、その点で適任だっただけでなく、すでに蔡総統と直接面会し、祝意を述べる等、国会議員の親台団体「日華議員懇談会」の幹事長も務めるほどの〝親台派〞だった。台湾が位置する台湾海峡、東シナ海等の周辺近海は、中国が領海支配を狙っている〝核心的利益〞エリアであり、緊張感が高まる今日、岸防衛相の役割は大である。中国が「尖閣諸島には台湾も含まれる」と主張して以上、日本も黙認できない。台湾支配を狙う中国を牽制する上でも、これまでの主権問題を棚上げして13年に締結した日台漁業協定は、中国への反駁効果も期待でき、日台の新たな政府間関係を模索する上でも有効であった。日本の安全保障上、地政学的にも重要な場所に位置しているが、万が一、〝台湾併合〞という中国の野望が実現すれば、日本の安全保障も脅かされることになる。日本に入ってくる石油の約80%や物品の輸出入の貿易船の海上ルートであり、国家としての死活問題となり、さらには軍事拠点ともなれば、日米関係も分断されかねない。ただ、20年には、台湾が自主建造したミサイル・コルベット艦「空母キラー」の進水式と高速機雷敷設艇の引き渡し式が、蔡氏や軍首脳らの出席の下で行われ、全方位で台湾周辺海域を守る決心を示した。このことはもう一つの中国に対する牽制と同時に〝同盟関係〞にある日米をも注目させた。※本論は月刊誌「リベラルタイム」2021年3月号に「匠の視点(第11回)」としても掲載。