大統領選後も「日韓関係」修復は困難

2022年1月に内閣府が公表した「外交に関する世論調査(令和3年9月)」に、今後の日韓関係の問いかけがあった。結果は「重要だと思わない」と答えた人が37.4%、過去最悪だったのは前回20年の40.4%だが、対韓国への国民感情は依然として冷え込んでいることがわかる。理由の一つには、17年5月に韓国大統領に就任した文在寅(ムン・ジェイン)氏による就任後5年間における対日外交姿勢のあり方が挙げられる。直近でも、文氏は日本政府の佐渡金山遺跡(所在地/新潟・佐渡市)の世界文化遺産登録への推薦決定に強い遺憾を表明。また、文大統領は22年2月1日の旧正月前には韓国の各分野で活躍する著名人や各国大使等の約1万5千人に、日韓が領有権を争う島根県の竹島(韓国名・独島)と見られるイラストが描かれた箱で贈り物を送った。後述する退任直前のタイミングで、自らの政権レガシーを意識したかのような行動は、国際社会からも自己中心主義と映っている。これらの事象も、悪化していた日韓関係の「負のスパイラル」から抜け出すどころか“加速”させた。筆者は02年11月以降、日韓経済協会の役員をしていた関係等もあり、幾度も訪韓してきた。これまでの本連載でも触れたが、09年4月には李明博(イ・ミョンパク)第17代大統領に高市早苗(経済産業副大臣/現自民党政調会長)氏らと共に接見している。また、15年5月には大統領府で朴槿惠(パク・クネ)第18代大統領にも面会してきた。その頃の両国関係は「未来志向」という言葉が象徴するように、歴史問題とされてきた元慰安婦や元徴用工問題の解決を模索していた。しかし、“左翼独裁”の文政権の出現により、それまでの保守政権が優先してきた経済成長のための産業化政策や、米韓同盟による安全保障等もおろそかにされてきた印象がある。文氏の日韓軽視の政治外交姿勢や、前述の歴史問題の再燃、韓国海軍の日本自衛隊航空機への射撃統制用レーダー照射事件等もあり、日韓関係は戦後最悪だ。日本国民の間には嫌韓感情が渦巻いている。国際情勢は「米中新冷戦」という危機的な状況にあるが、その認識も希薄で、米中の間で中国の米韓離間政策に振り回されている。文氏は国内政策においても例えば、ソウル市内のマンション価格が政権就任後に2倍に跳ね上がっている等、不動産価格の高騰を招き、「韓国土地住宅公社を巡る不正投機問題」等も抱えている。21年4月のソウル市および釜山市の市長選挙でも与党候補が敗れている。中国と親密な関係を作ろうとしてきた文氏は、北朝鮮外交にのめり込み、終戦宣言を実現して歴史に名を残そうとしたが、その北朝鮮は22年に入っても弾道ミサイル発射を繰返しているのが現実である。残された任期も秒読み段階に入り、「ポスト文」を決める大統領選挙(22年3月投開票)を迎えている。次期大統領としては、現与党であるリベラル系「共に民主党」の李在明(イ・ジェミヨン)氏(韓国・前京畿道知事)か、保守系最大野党「国民の力」の党内公認候補に決定した尹錫悦(ユン・ソギョル)前検事総長が有力のようだが、どちらも政治経験が乏しく、有権者からは期待できる候補とは思われておらず“消極的選択”のようだ。どちらが新大統領に就任しても、文氏が日韓関係に残した傷跡を消すことは困難であろう。※本欄は月刊誌「リベラルタイム」2022年4月号「匠の視点(第24回)」としても掲載。