モノづくり企業には“価値づくり”が求められる

製造業だけの話とは限らないが、表題にあげた“価値づくり”(後述)を行うには、自社の実力を把握し、強みを活かすにはどうすべきかを問うことから始まる。有名企業の中には、単に技術力を誇示したいがために、顧客の顕在ニーズを超えた過剰品質の商品を提供している場合もある。その強い技術力をオープンイノベーション(製品を開発する際、組織の枠を越え、知識・技術を結集すること)やクロスライセンス等と組み合わせ、潜在ニーズに対する“価値づくり”が出来れば、過当競争に巻き込まれにくくなる。つまり、従来の知恵のしぼり方を見直し、“新たな価値”を加えられれば、お客様の満足につながる商品の製造、販売が可能となる。このことは、既にソフトの視点が果たす役割が大きくなっていた世界的な傾向にも適応した事業展開でもある。そこで、“価値づくり”とは言ってはみても、具体的にはどのようにすればよいのか。海外のケースで恐縮だが、誰もが知っている成功事例で紹介すると、1977年にカリスマ経営者で知られたスティーブ・ジョブズが創業したAppleが挙げられよう。AppleはiPhoneやiPadという主力商品をもち、Macintosh(Mac)などのパソコン製造にも関与したモノづくりという点で一目置かれたグローバル企業だ。注目すべき点は、品質・機能などの面では必ずしも優位とは言えなかった競合品に、「操作性へのこだわり」や「お客様を魅了するデザイン」というソフト面で勝(まさ)ったことだ。Appleの商品を購入した人の多くは、「気持ちがよい」と表現される操作性や、優れたデザインに魅了されて、熱心なAppleシンパになると言われている。これまでの性能等のハード重視のモノづくりではなく、操作性やそれに伴う気持ちよさ、そしてデザインに、お客様がこれまで気付いていなかった“新しい価値”を盛り込んで成功した一例である。さらにAppleは、今日では珍しくはなくなったが、「自社販売網の構築」にもこだわり、直営店のApple Storeやネットを介した販売を行った。この販売の視点も新たな“価値づくり”の一面だったといえよう。