保守系・革新系の政治闘争が続く「韓国政界」

保守系・革新系の政治闘争が続く「韓国政界」

2025年3月28日、かつてビルマと呼ばれ、親日国だったミャンマーでマグニチュード(M)7・7の大地震が発生し、甚大な被害が出た。14年2月、筆者は副会長を務めていた、一般社団法人日韓経済協会の日韓国交正常化50周年記念事業の一環として、「第三国日韓連携事例ミャンマー視察ミ ッション」に参加し、同国を訪問したことがある。ミャンマーは軍事政権で、16年から5年間程はアウンサンスーチー氏による民主的政権の時代であったが、21年の軍事クーデターによって軍の支配が復活し、反体制派との内戦が続いている政治状況だ。今回の地震報道で、約10年前の記憶が脳裏に蘇り、筆者と韓国との関係に触れることにした。事業では日韓が連携し、日本側29名、韓国側19名が参加。加えて、報道のために日刊工業新聞社、NHKソウル支局から、記者が同行し、総勢50名ほどがミャンマーを視察し、同国旧首都ラングーンでJETRO(日本貿易振興機構)事務所長、日本人商工会議所会頭、三菱商事韓国法人社長等からミャンマーの工業化の現状について説明を 受けた。また、当時のティラワ港近辺の開発状況や、火力発電所の建設予定地を視察した。随行者間での会話の中では、特に 中国企業の進出に対抗し、「日韓は競争していくというよりは、連携すべきだ」との発言等もあった。 韓国参加者と友好的な雰囲気の中で、会話交流をしたことが思い出され、そのような流れから想起されたことは、当時と現在の日韓関係の相違だ。14年に行われた視察より1年前の13年2月、韓国史上初の女性大統領として、朴槿恵(パク・クネ)氏が就任していた。筆者は15年5月に「第47回日韓経済人会議」 に出席し、代表団として韓国大統領府青瓦台を訪れ朴大統領と面会し、別れ際には握手も交わしている(その時の様子を 筆者が代表の「匠総合研究所」のホーム ページに掲載)。しかしその後、朴氏は長年の親友だった崔順実 (チェ・スンシル )氏の収賄スキャンダルに巻き込まれ、大統領弾劾が成立して罷免されてしまった。 これまで韓国では、5年の大統領任期を終えると、歴代の韓国大統領の大半が、亡命・失脚・死刑・懲役刑・自殺・収監 等の結末に至っている。事実、朴氏の前の保守系の李明博( イ・ミョンパク)大統領も、17年発足した左派の文在寅( ムン・ジェイン)政権下の18年に、収賄等の疑いで逮捕され、収監されている。筆者は09年の訪韓時、当時の高市早苗経済産業副大臣とともに、その李氏に も接見している。進歩系(革新系)と保 守系の対立構図が激しい韓国では、政権 が代わると前政権の不正に対する捜査が 強化される「政治報復」が繰り返される。 現職の22年発足の保守系の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領も、韓国朝鮮日報3月31日付社説 には、「尹氏は野党代表等から内閣総弾 劾と内乱罪告発という究極の対立に進ん でいる。」とあり、実際に4月4日には 尹大統領は「非常戒厳」の宣布をめぐり 憲法裁判所に弾劾妥当で罷免され、約2年の任期を残して失職した。そして、現時点では、退任後に逮捕さ れていないのは文在寅氏だけであるが、その文氏にも韓国警察が収賄容疑に関して、召喚通知していることが判明してい る。6月3日予定の次期大統領選挙の結果がどうであれ、韓国政界で繰り広げられる〝銃声なき戦争〞は続くことになり、日韓関係の行く末を案じている。