中国の「軍事的圧力強化」で緊迫化が進む「台湾情勢」

中国の「軍事的圧力強化」で緊迫化が進む「台湾情勢」

今回は「中国の習近平政権」の近況に ついて考察する。現代の国際情勢は「ト ランプ、プーチン、習近平の3人が仕切 っている」といえる。 トランプ米大統領は1946年6月生 まれで現在78歳。プーチン露大統領 は52年10月生まれで72歳。そして、 習近平中国国家主席は、53年6月生ま れで71歳となる。 3名ともに若い頃から国家的苦難を身 近で見聞きしてきた者達ばかりだが、彼 らの人物像は一言でいえば〝自分本位〞だ。 そして、「力の支配」の時代を迎えた場合、 我国の安全保障の視点で考えると、最大 リスクに直結するのは習氏の〝胸の内〞 であろう。 習氏には、建国100周年を迎える2049年までに、「中華民国の偉大な復興」を自らが存命のうちに成し遂げたいとい う思いがある。その実現の上で、「台湾 を自国として取り込む」ことは必須事項 の1つだと習氏は認識している。 習氏は統一への野心をむき出しにし、 台湾への軍事圧力を強め、統一を遂行す るためには武力侵攻も辞さない姿勢を隠 そうともしていない。24年12月31日、新年に向けた中国CCTV(中中央電視台)の放送にて、習氏は台湾と の「統一」を誰も阻止できないと述べ、 台湾内外の独立派と見なす勢力に明確な 警告を発した。このことが周辺・関係諸 国に対して、台湾有事が近づいていると 懸念させている。中国共産党機関紙の『人民日報』は、3月2日付一面トップで、習氏が主導する「国家政権の安定・安全」について台 湾統一を実行するための軍事的準備を着 実に行っていると論評しており、そのこ とは日本有事にも波及する警戒すべきこ とだ。 実際、中国軍の艦艇が太平洋と東シナ 海を航行した回数が、防衛省・自衛隊の 最近の確認によれば、21年と比べて倍(68回)以上に増え、さらには太 平洋上で中国軍空母に搭載する戦闘機等 の離艦・着艦も1200回ほどあったこ とが確認されている。元陸上幕僚長の岩田清文氏は、広島県 で開催された会合(日本会議主催)の中 で「台湾・日本有事を抑止する」と題した講演を行い、「台湾有事を身近な脅威 と認識し、日本国民の意識を高めること が抑止になる」と訴えた。 東・南シナ海で海洋進出を進める中国に対し、台湾海峡が国際的に開かれた水 域だと示す狙いから、海上自衛隊の護衛 艦「あきづき」が、25年2月上旬に台 湾海峡を通過した。海自艦艇が同海峡を 航行したのは、24年9月に続き2回目 で、今回は自衛隊単独だったという。 台湾を自国の領土と見なす中国は海上 自衛隊の護衛艦が台湾海峡を通過したこ とに反発。25年3月3日、日本に対して日中関係や台湾海峡の平和と安定を乱 さないよう要求し、台湾に対する軍事的 圧力を強めている。3月5日に中国の全国人民代表大会 (全人代)が開幕し、そこで25年の政 府予算案も公表された。国防費は36 兆7600億円にのぼり、前年比7.2 %増を計上した。これは国防費の公表が 始まった1978年の国防費の100倍超だ。 政府活動報告をした李強首相は、訓練・ 戦備を一層進め、国家の主権・安全・発 展の利益を守ると強調した。とりわけ台湾問題については、「『台湾独立』分離活 動と外部勢力の干渉に断固反対する」とし、台湾との統一を呼びかけた。これまでの報告で使われていた「平和的」という表現も削除し、普遍的な価値の根幹をも喪失させた。