トランプ再来がもたらす「日中・米中関係」の変化

トランプ再来がもたらす「日中・米中関係」の変化

これまでの「匠の視点」では、日中関係をテーマにした論述を度々してきたが、日本の首相が変わり、アメリカの大統領が変わるタイミングで、中国と日本・米国との関係の今後について考察する。そして結論ありきではないが、やはり中国の習近平国家主席(共産党総書記)の意向や本心が最大の分析ポイントであろう。近年、中国は東シナ海や南シナ海において影響力拡大を図り、複数の関係国と係争を抱えている。盤石な基盤を築いたとされる習政権が自国の利益追求を強引に進めており日中関係には、海外メディアも注目している。25年1月からトランプ前大統領が返り咲き政権を担うことになったが、23年11月にバイデン米大統領は習氏と米中首脳会談と行った後の記者会見で、習氏を「独裁者」と発言している。一方のトランプ氏は、大統領選で圧勝し、性格的にも誰に対しても気遣うこともない“神”(作家の佐藤優元外交官)的な存在になりつつあるようだ。これまで米中戦争という言葉が飛び交ってきた対立軸での様相はより深刻化しそうだ。だから単に対中追加関税による締め付けだけに留まらず、例えば中国向けの半導体輸出規制を強化したり、香港紙の報道によると国務長官に指名された対中強硬派とされるマルコ・ルビオ上院議員の中国への入国禁止措置が継続されるようで、今後の展開が注目される。次に日中関係だが、直近では24年11月にペルーの首都リマで開催されアジア太平洋経済協力会議(APEC)での一連の首脳会議の中で、石破茂首相は習氏と初会談を行った。従来からの「戦略的互恵関係」の推進では一致したようだが、最近話題の日本産水産物の禁輸や後述する「日本人児童刺殺事件」に関しては、前向きな説明はなかったようだ。筆者として触れておきたいのは、24年9月18日に中国深圳市で日本人学校に登校中の男子児童が中国人に刺殺された事件が起きた件は、日中両国のメディア関係も深くは報じていない点だ。実は深読みをすれば、1931年9月18日に満州事変の発端となった柳条湖事件は「九一八事変」と呼ばれ、歴史的に「抗日戦争」の流れとなった事件だ。真相は不明ではあるが、景気の悪化などから社会不安が広まりつつあり、不満を抱く者も増えている中国の現状も背景にはあったのだろう。日本国内に話を移すと、これまで国会議員の支持というよりは、国民の多くから長期にわたり期待されてきた石破総理は、10月1日の衆院本会議での首班指名選挙で第103代内閣総理大臣に選出された。8月に出版した石破氏の自著「保守政治家」の中で言及している「尊敬の念を抱く石橋湛山」内閣(現行憲法では65日と歴代2番目に短命)と12月4日に並んだものの、早くも一部の関係者では短命政権に終わるのでは…と推測する状況も出始めている。そして、その後を引き継ぐのはトランプ氏・習氏とも“それなりの外交”をした岸田文雄前首相と囁かれている。中沢克二(日経新聞編集委員)氏のコラムによると、11月28日の中国国防相の報道官の記者会見で判明したことだが、盤石な権力基盤を築いたはずの中国軍の最高指揮官でもある習氏も、陸・海・空・ロケット軍など全軍を政治的にコントロールするため大抜てきした中央軍事委員会政治工作部主任の苗華を停職にしたとの由。やはり政権の維持・運営は、どの国のトップであっても「思うことと実際に行うこととは別物」で“洗脳外交”は容易くないようだ。